おしらすでござる

800gと550gで生まれた双子の成長記録(+雑記)

【動脈管開存症とは】双子の娘たちが手術を受けたので経験談をまとめます

どうも、双子パパのしらすです!


今回は『動脈管開存症』についてです。

小さく生まれた赤ちゃんに多いこの病気なのですが、800gと550gで生まれた我が家の双子たちは二人ともこの手術を受けています。


今現在は手術痕も気にならないほどに回復していますが、この病気にかかったことで本当に色々な心配もしましたし、苦労もしました。


今日は子ども達が乗り越えた『動脈管開存症について』と、『手術を受けた時の経験談』をまとめていこうと思います。

動脈管開存症とは

f:id:sirasupapadon:20180428144754g:plain

動脈管とは心臓にある血管で、赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる時に、肺動脈から大動脈への抜け道になっている血管のことをいいます。


お腹の中にいる時は必要な血管ですが、赤ちゃんが生まれてから肺で呼吸をし始めると、この抜け道は必要がなくなり、生後2~3週までに完全に閉じてしまいます。

この動脈管が生まれてからも自然に閉じず、そのまま残っているものを動脈管開存症といいます。


この病気はもっとも多い先天性心疾患のひとつで、全体の5~10%を占めています。


動脈管開存症では、全身に流れるべき血液の一部が大動脈から肺動脈へ流れるために、肺や心臓(左心房・左心室)に負担がかかります。


動脈管が太く開いているほど流れる血液の量が多くなり、その負担は大きくなります。
参考:動脈管開存症 — 日本小児外科学会

動脈管開存症の治療方法

『動脈管』は自然に閉じることもありますが、『動脈管』が太く、心臓などに負担がかかってきていると判断された場合には治療が必要になります。


治療法としては薬物治療と外科的手術があります。


薬物治療の代表的な薬として『インドメタシン』があります。

インドメタシン』は非常に有効で、80%以上は薬の服用で動脈管は閉鎖します。副作用として低血糖や腎不全、まれに壊死性腸炎脳出血をおこすことがあります。


それでも閉鎖しない場合は外科手術をすることになります。

外科手術は全身麻酔で行われます。

全身麻酔を行ったのち、左の脇腹を切開し、そこから紐を通して、動脈管を縛るというものです。

合併症として、声を出すための神経が近くを通っているため、その神経が手術で傷付いてしまうと、声がハスキーになったり、声がかすれたりすることがあるそうです。


また、他の方のブログなどを呼んでいると『内視鏡』での手術を行われる病院もあるそうなので、手術を受ける前の説明で、『どういった手術方法なのか』とか『どういった合併症があるのか』など、しっかり聞かれるといいと思います。


ちなみに我が家の子ども達の場合、薬物治療をしたのですが、思うような効果が得られなかったので、外科手術をすることになります。(詳しくは後述します)


心臓の手術の中では『命に関わる危険性は低い』そうなのですが、それでも手術が終わるまでは心配でたまりませんでした。

動脈管開存症経験談

ここからは実際に我が家の娘たちの経験談をまとめていこうと思います。

我が家の双子は二人ともこの病気にかかっているのですが、症状に大きな違いがありました。


長女バージョンと次女バージョン、二つのパターンに分けてまとめていこうと思います。

長女の場合

長女の動脈管は、太くて短いという特徴がありました。

太くて短い場合は上の説明にも書いている通り、肺や心臓にかける負担が大きくかかることになります。


長女の動脈管は生まれてからずっと、肺に大きな負担をかけ続けていました。

生まれてすぐに薬物治療をしているものの、『動脈管が太くて短いので効果は見込めない』とのこと。

それでも薬が効いてくれることを信じて、薬物治療を続けました。


そして、生まれてから1週間がたった頃でしょうか。

動脈管がかけ続ける負担に肺の血管が耐えきれなくなり、肺から出血を起こし、吐血しました。


先生から『長女ちゃんが動脈管の影響で肺出血を起こしました』と聞いた時はゾッとしました。


幸い、大事には至りませんでしたが、動脈管が肺に与えている負担が大きく、『すぐに治療する必要がある』ということで、手術をすることになりました。

ただ、生まれた病院では『動脈管開存症の手術はできない』とのことなので、2日後に隣県の大学病院へ転院することに。

長女は生後1週間と2日で全身麻酔の手術を受けることになりました。


手術を受けるためには、大学病院で説明と同意書にサインをしなくてはいけないので、手術の説明を聞くために、手術前日に妻とともに大学病院に説明に聞きに行きました。


そして説明を聞いた翌日、長女は手術。無事に手術は成功しました。


手術後は大きな問題も起こらず2週間ほどで無事に回復。もとの病院に戻ることになりました。

次女の場合

次女の場合は、少し特殊なケースになります。


次女の動脈管は、生まれてからすぐに行う投薬治療、すなわち『インドメタシン』が効いて、生後2週間ほどで動脈管は閉じました。

次女の動脈管の特徴は『細くて長い』というもの。

肺に与える負担も小さく、薬も上手く効いてくれて、ホッとしていました。


ところが、生後1カ月を迎えた頃。

NICU内で細菌に感染してしまい、それの影響でせっかく閉じた動脈管が開いてしまいました

幸い開いた動脈管は『細くて長い』ままだったので、肺や心臓に大きな負担はかかりませんでしたが、それでも少なからず肺に負担を与えているということで、生後1カ月で外科手術をすることになります。


次女も長女と同じ流れで、隣県の大学病院へ転院し、その後、すぐに手術をすることになりました。


こちらも手術は無事成功。術後も順調に回復し、転院から2週間でもとの病院に戻ってくることができました。


動脈管開存症の治療で知ったこと・感じたこと

ここからは子供たちが動脈管開存症の手術を受けるにあたり、僕が個人的に知ったこと、感じたことをツラツラと書いていきます。

転院しないと手術が受けられない

これは入院してる病院にもよると思いますが、ウチの場合は子ども達が入院している病院では動脈管開存症の手術は受けられませんでした。

なので、子ども達は手術の当日に大学病院へ転院。そこで手術をして状態が安定し次第、元の病院に戻ってくることになります。


ウチの双子の場合は二人が別のタイミングで動脈管開存症の手術を受けたので、それぞれ別のタイミングで転院。

片方が転院してる間は、生まれた病院と、手術を受けた病院、それぞれの病院のNICUに面会に行き、それぞれに母乳をもっていかなくてはいけませんでした。


毎日、日替わりで面会に行く病院を決めては、ひたすら2つの病院に通う日々を1ヶ月ほど送りました。


子供たちがNICUに入院している間で、一番大変だった時期はこの頃だった気がします。


子供の心臓の手術ってやっぱり怖い


小さく生まれた子どもにはよくある病気で、治療もよくしてるし、手術も危険性の低いものなので大丈夫ですよ


これは先生が言ってくれた言葉です。


動脈管開存症の手術は、心臓自体を切り開いて手術するものではないので、心臓の手術の中では命にかかわる可能性は極めて低いそうです。

手術の前日の説明でこの言葉を聞いて、少しはホッとしたのですが、それでも手術をする当日は不安で不安でたまりませんでした。


手術室まで移動する保育器の中には、子供がスヤスヤ眠っていて、祈るような気持ちでそれを見届けていましたし、手術を受けてる最中の2時間弱の間は当然不安でした。

待合室で待っていると『手術が無事に終わりました』とNICUの看護師さんが教えてくれて、手術室の前で待ち、手術室から出てきた子どもは手術を受ける前と同じくスヤスヤ眠っていて、その寝顔を見て少しはホッとしましたが、術後の状態が安定するまではやっぱり不安が付きまといますし、どれをとっても気が気ではありませんでした。


危険度が低い手術とはいえ、『心臓の手術』と聞くとやっぱり怖かったです。

妻の負担がハンパない

長女の場合は生後1週間後の手術でした。つまり妻にとっては出産後1週間での出来事になります。


その1週間の間に母乳を搾りつつ、帝王切開の傷を癒しつつ、退院の準備をしてくれていました。

帝王切開の手術から1週間後に長女の手術があったので、手術の説明を聞くために繰り上げ退院。

妻も『手術のことは気になる』ということで、お腹の傷も痛むまま、大きい病院へ子供の手術の説明を聞きに行くことになりました。


その大学病院がまた混みまくっていて近くの駐車場に停めることができず、少しの距離を歩くことになりました。


僕『(妻に)大丈夫?歩ける?』

妻『手術から1週間経ってるから多分歩けると思う・・・』


妻はこう言いましたが、やはり手術の傷が痛んで10歩ほど歩いてダウン。

結局病院の入口付近に嫁さんだけを降ろし、嫁さんは先に病院へ行き、僕は病院まで徒歩10分ぐらいのところに車を停めて歩いて行き、ロビーで待ち合わせしました。


病院内では車いすを借りられたので、それに妻を乗せて病院内を移動。

なんとかNICUに到着することができ、無事に子供の手術の説明を聞くことができました。


ちなみに手術の説明は子供の手術日の前日。

子供の手術の当日にも、もう一回同じことをして病院へ行くことになるので、妻には相当な負担をかけてしまいました。


1か月後にも次女の手術が同じくあったので、1か月後にも同じことを繰り返しています。(この頃には、痛みもだいぶとれていたので、長女の時と比べると大丈夫でした)


あの時は子供のこととはいえ、妻には本当に申し訳なく思います。


ママの強さってのはこういうことが繰り返されて培われていくのだなと痛感します。


と同時に男は痛い思いとかそういうのは全くしないので、せめてフォローすることぐらいは全力でしないといけないなと痛感しました。


状況によっては、男一人でも手術の説明などは聞きにいった方がいいかもしれませんね。


県外の治療は別途手続きが必要で時間がかかる

子供たちの治療は養育医療制度を利用しているので、基本的には無料で治療が受けられます。

『県外での治療』に関しても同じく無料で受けられるのですが、別途申請が必要でした。


申請はそれぞれの市役所や役場で行い、病院とは診断書でのやり取りが必要になります。
(住んでいる場所や地域で申請方法は違うと思うので、詳しくは役所か病院に問い合わせましょう!)


大きな病院だということもあり、診断書がなかなか事務までおりてこなかったり、診断書の形式が求めているものと違ったり、病院に通いつつ役所に行かなくてはいけなかったり、色々あって手続きに1ヶ月以上かかりました。


病院 → 役所 → 自宅 → 役所 → 病院 → 自宅 → 役所


たびたび役所に行って資料をもらったり、それを記入したり、病院にもその資料を持って行ったり、修正したりして、そこそこの手間がかかりました。


かなり時間もかかるので事務処理は早めに済ましておいた方がいいと思います。


まぁ、このやりとりをするかしないかで、ウン百万円の手術が無料でうけられるので、この手続きは必須ですね。


ちなみに、まともに全額手術代を払っていれば、余裕で僕の年収ぐらいはぶっ飛んでいく事実には驚きました。


高額な医療を無料で受けられる日本の制度は本当にありがたいと思います!

動脈管開存症の予後

動脈管開存症の手術後に、長女と次女、それぞれに気になる症状が出たのでまとめておこうと思います。

長女の症状

横隔膜が上がったままの状態になっている

無事に手術を終えて、順調に回復していた長女。

手術を終えてから1か月後。先生が少し気になることがあると言って話をして下さいました。


先生:手術との関係はわかりませんが、さつきちゃんの左の横隔膜があがったままで下がらない状態が続いています。これが続けば呼吸に何らかの影響が出るかもしれません


f:id:sirasupapadon:20190113204103g:plain


横隔膜は上の図でいうと肺の下にある膜で、肺を膨らませたり縮ませたりさせる呼吸をするために大事な組織です。


先生:手術の後遺症とは関係ないと大学病院の先生は言っておられるので、手術との因果関係は分かりません。今は一旦経過観察していきます。症状次第では何らかの対応をすることになります


その後、2週間ほどかけて長女の横隔膜は自然に治り、事なきを得ましたが先生は手術の影響を疑っておられました。

反回神経麻痺

横隔膜の件が落ち着いてしばらくしてからのことです。またまた気になることが出てきたと先生からお話がありました。


先生:左反回神経が麻痺している症状が見られます


f:id:sirasupapadon:20190113204155j:plain


反回神経はノドにある神経で、飲み物や食べ物を食べて、ノドを通るときに、食べ物を食道の方へ導くために必要な神経になります。

飲み物や食べ物がノドを通る瞬間に、反回神経は気管にフタをして、飲み物や食べ物を食道の方に導いてくれます。

この神経の反射が遅れると、気管の方に飲み物が入りむせます。


よく飲み物を飲むと変なところに入ってむせることがありますよね?

反回神経の反応が遅れるとこういう症状が起こります。


長女は手術の影響で左の反回神経が麻痺している為、むせやすいということになります。


しばらく経過観察してもらいましたが状況は変わらず、おそらく『むせやすい』という症状とは一生のお付き合いになりそうです。

次女の症状

大動脈狭窄(きょうさく)

動脈管開存症の手術をして、次女も無事に大学病院から元の病院に戻ってくることが出来ました。


それから1カ月が経過して、先生からお話がありました。


先生:今回、手術をしてから大動脈の幅が通常よりも若干狭くなっている症状(狭窄(きょうさく))が見られます。今は体への影響が出ていないので大丈夫ですが、いつ影響が出てくるかわからないので、その点に注意しながら経過観察していきます。


大動脈狭窄は動脈管を縛ったことで出た症状のようです。


心臓に負担をかけていなければ、特に治療をほどこす必要はありませんが、もしこれから経過観察していく中で、狭窄(きょうさく)の症状がひどくなると、カテーテルなどの治療が必要になってきます。

余分な血管が残っている

これは動脈管開存症とは直接関係ありませんが、『次女の心臓には動脈管とは別に余分な血管が1本残っている』という話がありました。


現状、心臓に負担はかかっていないので、経過観察になるそうですが、心臓にある余分な血管は、動脈管と同じく『肺や心臓に負担をかける』ことが多いそうなので、今後も注意してみていく必要があります。


体の大きさに対して心臓が大きくなってくると、心臓に負担がかかっているという判断になり、何かしらの処置が必要になってくるということで、今後も注意が必要です。

1歳になった時の予後検診の結果

www.osirasu.com


1歳になった時に受けた予後検診についてまとめている記事です。

経過は良好です。


気になる方は読んでみてください。

まとめ:動脈管開存症の体験談について


とにかく無事にすんで良かった!


最終的にはここに行き着きます。

こうやって記事に出来るのも全てが無事に済んだからですよね。


また、子供を治療してくれた先生、看護士さん、協力してくれた自分の両親、妻の両親、痛いながら頑張ってくれた妻。

色んな人の協力を得て、我が家の子供たちは病気に立ち向かうことができ、そして乗り越えることができました。


このことはこれから先も一生忘れることはないでしょう。


そして今、この瞬間にも同じような境遇で悩んでる親御さん方、あくまでもこの記事に書いた出来事は一例ですが、『動脈管開存症の治療を受けて元気に育っている子供がいる』という事実は間違いなくあります。


この記事を読まれている方々の子供さんの治療が上手くいくように心からお祈りしています。

その他関連記事

www.osirasu.com
www.osirasu.com
www.osirasu.com


合わせて読んでいただけると嬉しいです。


終わり。